ゴミラの消失
佐々宝砂
ゴミラは疲れてしまった。
うつむいて
とぼとぼと茶色い海辺をあるいた。
テトラポットが陽気な声で
「あたしはゴミじゃないわよ」と言った。
でもゴミラは知っていた、
テトラポットはゴミラの眷属だ。
ゴミラはやる気満々で生まれてきたのだ、
東京タワーを壊さなくちゃとおもった、
国会議事堂も壊さなくちゃとおもった、
だけど東京タワーはゴミだったし、
国会はゴミラよりゴミらしいモノでいっぱいだった。
ゴミラはなにをしたらいいかわからない。
砂浜にしゃがみこんで
涙しながら
きぐるみを脱いだ。
なかから出てきた裸のなにかが
ゴミなのかそうでないのか、
私は知らない。
ともあれゴミラはもういないのである。