ヨウ素液世界
kauzak

携帯電話のカメラモードを
セピアにセットして
梅雨の晴れ間の街を歩く

写り込む世界は

春まだ浅い砂浜で風に吹かれ
総てをなくしてしまったことを悟った
あの時のまま止まったように

見えて

そのイメージが
まだ自分に似つかわしいと
感じてしまうことが口惜しい

いっそ写された光景が
消毒されてまっさらになって
僕の中に堆積するように

感じられるならば

浮かび上がるきっかけに
なるというのに

セピアはセピアのまま
切り取られるから

通常モードに切り替えることでしか
僕はまだ
やり過ごす術を持たない


自由詩 ヨウ素液世界 Copyright kauzak 2008-07-12 12:08:08
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