風の衣 
服部 剛

三日後にわたしは 
三十三年間着ていたわたしを脱いで 
風の衣を着るだろう 

その時世界の何処かに響く 
あの産声が 
聞こえて来る 

その時空から降る 
透けた掌と差しのべるこの掌は 
結ばれる 


さようなら、三十三年間の、わたし 


解き明かせぬ哀しみに跪き、 
涙を絞り落としていた、わたし 

かけがえのない人々と笑顔を交わし、 
暖かく見守られていた、わたし 


このいのちは 
別々の空を見上げる 
離れた人と人を結ぶ 
ひとすじの糸になろう 

両腕をひろげると 
左右に姿を現し 
頭を垂らす隣人の 
冷えた手を握ろう 

三人の間に 
朧に発光する 
いのちの灯 

収まりきらない歓びが 
今にも溢れそうな  
からだに発光を帯びて 
瞳を閉じる
いのちの人の面影 


わたし達に、両腕を、ひろげている 








自由詩 風の衣  Copyright 服部 剛 2008-07-08 19:19:21
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