嫌われ者
1486 106

嫌われ者は山に住んでいた
都会の人々に嫌われていたし
嫌われ者も都会が好きじゃなかった

嫌われ者は森が好きだった
澄んだ空気や木の実が好きだった
動物と会話することが出来るから
よくウサギや小鳥と一緒にいた
森の動物はみんな嫌われ者と仲良しだった

嫌われ者は嘘が吐けなかったし
感じたことははっきりと言うから
都会ではみんなに避けられていた

山の動物は嘘を知らなかった
みんなが正直に話してくれた
だから嫌われ者は自然が好きだった
毎日楽しく暮らしていられた

その頃都会では町長が変わり
山を切り崩す話が持ち上がった
動物達の意志を代弁するために
嫌われ者は何年ぶりかに山を下りた

嫌われ者は必死に叫んだ
役場に乗り込み何度も説得した
だけど誰も耳を傾けなかった
都会の人々に嫌われていたから

やがて森は競技場に変わり
動物達は姿を消した
嫌われ者は家を失い
町から貰った僅かなお金を
役場の前で破り捨てると
そのまま町を出ていった

嫌われ者は今小さな村で
農作物を耕しながら暮らしている
そこには嫌われ者を嫌う人はいなかった
みんなが自然と仲良しだった

休む時は切り株に腰掛け
動物達との会話を楽しんだ
嫌われ者はなんでも正直に話したけど
都会のことだけは口にしなかった


自由詩 嫌われ者 Copyright 1486 106 2008-07-02 19:02:24
notebook Home 戻る  過去 未来