旅の便り 
服部 剛

頭上に広がる空の下 
何処までも流れる川のほとり 
旅人はぽつんと一人 
立っていた 

雲に隠れた天使が 
ちらっと顔を出し 
碧い硝子がらすの瞳で 
彼に云う 


  きみの歌を、聞かせてよ 
  他の誰でもない 
  きみ自身を、咲かせてよ 
              」 

歩き疲れた旅人は、腰を下ろした。 
背負っていた荷物を、下ろした。 
柔い緑の草々は、
それらの重さを、受けとめた。 

鞄から取り出した 
ペンと便箋を手に 
遠い未来の誰かへ綴る 
旅の便り 

ふと見下ろせば 
あまりに細い茎の上に咲く 
黄色い花が一人 
風の歌を囁いた 

小さい顔に 
いっぱいの 
歓びを広げて 








自由詩 旅の便り  Copyright 服部 剛 2008-06-27 23:23:32
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