許容
かいぶつ

僕は椅子に腰かけ
四階の窓から
町の景色を見下ろしていた

窓枠の中では人や車が
あらゆる方角へ規則通りに行き来する
木々の枝葉は透明な風に揺られ
ビルは巨大な存在感で立ち尽くしている
その間を一定の時間毎に
電車が走り抜けてゆく
空は今日も青い

こんな風景を眺めていると
全てのものには当然ながら
それぞれの命があり
それぞれの命との向き合い方があり
それぞれの死との距離感や歩幅
鼓動と息づかい 表情と機嫌があり
僕らはそんなそれぞれの違いを
無意識に黙認し
ひっそりと許しあっているんだと
実感する

僕がこの世を去っても
太陽の塔は挑み続け
君がこの世を去っても
季節はパタパタと惜しげもなく姿を変える
僕らの命は短く儚いと言われているけど
それも人それぞれの命の扱い方で
どうにでも変化する

でも僕と君が与えられた命に
たいして変わりはないよ
僕らは同じ砂時計の中にいる

人と人との間には
様々な感情が複雑に絡み合い
不和が生まれる
水と魚の関係ぐらい
お互いを尊重した暮らしにしたいけど
そう簡単にはいかないもの

だからせめて
この小さい窓枠の向こうの町で
生活を営んでいる
似たような君と僕だから
せめて僕らだけでも
仲良く過ごせて行けたら
いいんじゃないかと思ったんだ

ぽつりと空から雨粒が落ち
一瞬のうちに町が雷雨に覆われる
慌しくなる風景
今頃君も僕と同じように
どこかでこの音を聞いているのかな?

地面が乾く頃
僕は窓枠の向こうの
孤独な住人


自由詩 許容 Copyright かいぶつ 2008-06-16 15:11:02
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