犠牲
AKiHiCo

可哀想な兄弟
鎖に捕らわれて
狭い部屋で
声を重ねて歌うよ

昔に聴いた子守唄
眠れよ眠れ
静かに眠れよ
響き合う声は透けて
やがて光を呼ぶ

兄さん、聞いて
僕たちは
呪われているんだ
産まれた瞬間に
呪いを
かけられたんだよ

歌っている時は
とても楽しいんだ
全てが美しく響き合う
兄さんの唇は綺麗だよ
殺そうとしてもいいかな

もう頷いてくれるよね
この鎖は解けない
僕たちは歌う事しか
許されていない
憧れの窓の外の景色
蒼から藍に急ぐ
染まれよ染まれ

可哀想な兄弟
卑劣な言葉が降り注ぐ
疫病神災いの火種
仕組まれた運命

僕が兄さんを
救ってあげるから
だから目蓋を閉じて
歌おうよ

雫は限りなく赤
悲しみ走る部屋の
その端で崩れて消える
鎖だけが後に残り

どうして
こんな運命が在っただろう

兄さん、呪いが解けたよ
僕もすぐ行くから
やっぱり兄さんの傍に
居させてね

涙で視界が滲む
彼の笑顔が
苦しくても笑っていた彼の
表情にいつも救われてきた
本当は痛かっただろうに
僕も笑った一緒に歌った
村の人たちが
彼の死を喜び歓声をあげた
これで村が繁栄すると
身体を縛っていた鎖が解かれた








自由詩 犠牲 Copyright AKiHiCo 2008-06-08 16:21:05
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