駅ロータリー周辺に降る雨は止まずに
プテラノドン

閉店間際のショッピングモールで、
世界で一番安く靴下が手に入ると友人は言っていたけれど、
生憎、今日は雨降りだから
せっかくの靴下が濡れてしまうね。

それはそうと今日、仕事帰りに駅で外人に道を尋ねられたよ。
焼き肉食い放題の店は何処ですか、って笑っちゃうよ。
僕らのいた駅ビルにそんなところはなかったし、彼は神父だったのだから。
そして僕が教師だって事を知ると彼は、
「子供達の中で神を信じる子はいますか」と尋ねてきた。
「神様は分らないけれど、僕を信じている子供達はいるよ」
と僕は言った。それを聞いた神父は笑って、
「あなたは神様より子供達を信じるのですね」と、
うまいこと言ったんだ。僕は負けじと、―神様より、子供達より、
僕は好きな女の子を信じているけどね、と言った。
それから僕の片思いの話を聞いて、
「最高ですね。」と笑った神父には、オーストラリアに
ジュリアという名前の彼女がいて、
(写真を見せてもらったけど、お世辞にも可愛いとは言えない)
安っぽい駅ビルのロータリーは、バス停留所は、
空車だらけのタクシーの前で傘をささずに立っていた僕らは、
当たり前のように雨に濡れていて、
別れ際に、日本にキリストはいるのかと聞いた僕の問いかけに、
「いないから、こっちから逢いに行かなくちゃならない。」
とジェームスは答えた。
僕は笑ったよ。だって僕ら二人は本当に逢いに行く必要があったんだ。
きっと今以上に、雨に濡れながら。


自由詩 駅ロータリー周辺に降る雨は止まずに Copyright プテラノドン 2008-06-01 01:43:41
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