カラーヒヨコを知らないから
虹村 凌

瀕死の夕日がこっちを見たままで
もう三十分が過ぎようとしている

愛しさえしなければ
関係は容易に築けただろうに
名前も知らなければ
容易に愛しあえただろうに

昔あった出来事か
昔夢で見た出来事か
境界線が見えない
その「瞬間」が
過去の美しさと追憶の華麗さをもって現れる
記憶と愛の共謀

記号Aコンプレックスが記号Bコンプレックスに恋をする
カオスとカオスの単一生殖は果たされずに
無記名は無記名のまま
コンプレックスは消化されずに記号ABコンプレックスに

腐りかけた脳味噌が失禁したような言葉


脳味噌がぶっ飛ぶ程の程の速度で
脳髄も脳漿も血管も心臓も
全部を置いてもっともっと遠く
もっと速く
助けてくれ
もっと速く
もっと遠くに行かなきゃ
全部置いていかなきゃ
助からない
もう助からなくなる
手遅れになる前に行かなきゃ
もっと速く
キリモミも出来ないくらい速く
もっと速く
もっと遠く
口から脳味噌が飛び出るくらい
速く速く速く




カラーヒヨコを知らないから
まだ助かる気がするだけ


自由詩 カラーヒヨコを知らないから Copyright 虹村 凌 2008-05-18 22:47:57
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