創書日和「器」
虹村 凌

机の上に取り残された食器が
うらめしそうな目でこっちを見ている
脂っぽい食べ物でも入ってたんだろう
白く黄ばんだ何かがこびりついて
誰かの吸殻が取り残されている
あのロゴはあのストライプは
どの煙草だったか思い出せない

取り残された僕以外の恋人達は
明け方までに何度もキスをして
明日になったら何処へいくのかと囁きあってる
夜中は軋みながら朝に向かう
すり減らしながら朝に向かう

置いてけぼりを食らったね
そう言って隣に座り込む女の名前を思い出せないまま
ゆっくりと目を閉じる
名前は呼ばれない
髪の脂の匂いが
する
肩に体重が
かかる
耳に息が


がしゃん


部屋を割る
眠気を割る
食器を割る
女の頭を割った
血だまりに浮かんだ吸殻は
トウキョウ・コネクション


自由詩 創書日和「器」 Copyright 虹村 凌 2008-05-21 00:05:56
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