日常
吉田ぐんじょう


わたしの家の郵便受けには
朝になるといつも
赤い花がいっぱいに届けられる
露を含んでぽったりと
流れ出しそうな赤い花だ
どこかにわたしを好きな人でもいるのだろうか
捨てるに捨てられないので
たまにお風呂に浮かべたりしているが
しばらくすると溶け出して
浴槽の中は血のようになる
真っ赤なお湯のなかでわたしは
どうしていいかわからない
好かれているのではなくて
嫌われているのかもしれない


真昼の太陽は
レースのカーテン越しに
ひらりひらりと光を落として
その一枚ずつが
床の上で可愛い包装紙になる

それをこっそり職場へ持っていき
女の子や男の子がレジに差し出した
鉛筆や消しごむや定規なんかを
時間をかけてつつんでやった
不器用なわたしが作った不恰好な包みは
春の陽のにおいがして
子供たちは笑う
真っ白い光のようだ


ぐったりと疲れて車に乗り込み
国道を八十キロで走る
頭の中の八割は
もう死んでもいいのではないか
という考えでいっぱいだ
残りの二割は
君のことや職場のことや
エロいことで占められている

信号で止まったときに
バッグの中にいつも入れている
マシュマロの袋を開け
ひとつふたつ掴みだして口に入れた
甘くて柔らかいマシュマロは
なんだか女の人のようで
女の人を噛んでいるようで
ちょっとだけ欲情する
それで
死んでもいいのではないか
という気持ちを紛らわしている
いつも


※月刊未詳24に投稿したもの。


自由詩 日常 Copyright 吉田ぐんじょう 2008-05-13 23:03:27
notebook Home 戻る