夜想曲( reverse )
たりぽん(大理 奔)


  (カワセミ!カワセミ!)

木々の重なりの一番深く
真っ暗な沢の灌木で小さな光を見つける
ポストの底に忘れ去られた手紙のように
思い出せないのに忘れられない
ちいさな鳥の形を
手のひらでまねて
  
そう、みんな散ってしまった
雑木林に葉擦れの足音が遠ざかり
薄い暗闇の小枝にさがす
ぬくもり、ぬくもり

  (ペルセイス!ペルセイス!)

私の小指だって中指だって
すり抜けてしまう、風が
雑木林を驚かし
いつか失ったもののように
鳥たちは光る目を、星にばらまく
みんな、みんないってしまった

鳶色の美しい鳥を
いつまでも見つめていたかった
根のようにからめようとする枝々も
自由なかたちを虜にはできない
黒髪が星座を憶えないように

夜、光る目の鳥たちが
夢の雑木林でささやく
いつか去ってしまうと知っている
ここを去らねばならないと
鳥たちが、目を光らせる

根のように記憶をからめて
黒髪のように星宿をからめて





自由詩 夜想曲( reverse ) Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-05-11 01:37:27
notebook Home 戻る  過去 未来