城之崎二手次郎

 ちち、ちち。雀の声で目をさました。昨日の悪夢を忘れさせてくれる清々しい朝だ。ベッドの脇のカーテンを開くと、昇ったばかりの太陽が笑顔を振りまいていた。負けじと笑い返す。おかげで唇がすこし裂けた。顔を洗うために洗面所へ移動した。風呂場の扉を背にして洗面台の鏡に向う。唇に血がにじんでいた。鏡に映る扉に目をやる。その向こう、空の浴槽には彼女の死体が座っている。頭から流れていた血は、もう止まっただろうか。

あとがき。
二〇〇字物語第三十六弾。


散文(批評随筆小説等)Copyright 城之崎二手次郎 2004-07-09 12:58:22
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