わたし
竹節一二三

カーテンを開けると
山が見えて
その中腹には墓が並んでいる
集団住宅を思わせる密度
西の端にペンギンのような像
人に聞くと観音菩薩像らしい

部屋の端で
卵と砂糖と薄力粉をかき混ぜる
ねっとりと思い
これは熱した牛乳と混ぜたら
カスタードクリームになる
おいしそうだと
墓場の彼らは 思うのだろうか
ペンギン菩薩はそこで
何を見ているのだろうか

温めた牛乳
卵と砂糖と薄力粉の集合体
熱しながら混ぜる
水分が蒸発するのか
何かと何かが結合しているのか
きべらは黄色いものを絡ませて 重くなる
窓からは山の墓石が見えた

ねっとりとおもい集合体が体
牛乳が魂
熱でからまり
ひとつになる
カスタードクリームは
わたし
ペンギン観音は
たぶん かき混ぜるひと

不意に
やる気がなくなって
カスタードをタッパーに詰めた
冷蔵庫に押し込んで
とびらをしめる
腐らせる前に食べてしまわなければ
あれは わたし

賞味期限のみじかい くさる前の体


自由詩 わたし Copyright 竹節一二三 2004-07-08 19:57:58
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