全力疾走
山田隆

坂の向こうの景色が見たい。
違う何かが、そこにあったらあったで、
なかったらなかったで・・それでいいんだ。

だから君は全力でペダルを漕ぐ。
吐息がハッキリと見えるくらいに、前を見てる。

スリッパが片っぽだけ脱げて
坂の途中くらいで止まったけど、興味はない。
むしろペダルを漕ぐ素足の感触が楽しいくらい。

あと10メートル・・5メートル
白線がゆっくりと通り過ぎて

ゆらゆら横にゆれる体
不安定なバランスで成り立った君の世界

僕は知っていた。その先にあるのは海だけ。
特に興味はない。

でも君の後姿は、空の青に吸い込まれるようで
なんだかうらやましくて、走って追いかけた。

途中で拾ったスリッパを君に渡して
一緒に海を見ていた。


自由詩 全力疾走 Copyright 山田隆 2008-05-06 18:43:50
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