はざま(ひとつの笛)
木立 悟
一歩ごとに浮き沈み
左目は左足を追ってはもどり
原の左半分を見る
下だけが明るい道
上だけを聴き歩む
鳥が落ちては消えつづける道
これがのぞみ これだけがのぞみ
草を踏まずに原をゆき
小さな一羽と共に眠る
家々のはざま
はばたくはざま
雨揺らすかたち
傷は駆け うたを唱い
うたはもどらず
やがて羽に
原と道のさかいめの色
ひとつの笛が埋められていて
今日はずっと静かにしている
のぞみや鳥が消え去るあいだも
傷は傷のままに濡れ
雨のむこうの雨を見ている
羽の渦が満ちては干く
笛ははざまを見つめながら
訪れるものに片目をふせる
自由詩
はざま(ひとつの笛)
Copyright
木立 悟
2008-05-06 17:24:30