ビタミン
霜天

新しい音が鳴り出すと
見上げてしまう癖がついた
国道沿いの滲んだ校舎の上
スピーカーが漏らす
ひずんだ音
ずっとずっと変わらない
ひとつ
呼吸のように響いては
震えている何か


僕等に必要不可欠なもの
羽ばたいていくもの


見えないところで循環しているんだって
伸び上がった街は空に突き刺さってる
ビルの顔をした四角い箱は
見上げても何も響かない
控えめに鳴らされるチャイム
ひずんだ音のスピーカー
クラクションのそばでたたずんで
見上げてしまう癖を
ひとつ
内側にこびりついた何かがぶるぶると震えて
ああ そうだ
これを待っていた
これを持っていた


どこも輪郭は似通ってしまって
脱ぎ捨てるように前に進んでは
ひとつ
不足を補うように見上げては
取り込む
循環しているんだって
必要不可欠なんだって
充填しては
脱ぎ捨てるように前へ


国道沿いの校舎の上で
スピーカーは少し音痴で
いつまでも明けない梅雨の雨の中
ひとつ
控えめに鳴らされる
ひずんだチャイム

ここでは
帰り道はいつも示されている


自由詩 ビタミン Copyright 霜天 2004-07-08 11:40:28
notebook Home 戻る