サイボーグの父親
草野春心
コンピュータの前に一人の男が座っている
白い髭を豊かに蓄え
禿げ上がった頭を気にしながら
彼はサイボーグの父親だ
その心の原子までズームインしてゆきたいが
サイボーグの父親というのがどんな気持ちか解らない
「みんな同じだったんだ」と独り言
内臓から寿命まですっかり薬漬けにして
初めからみんなそうだったんだ
そしてブラックアウトしたふりの思考にスイッチを入れる
妻も長男も次男も赤い心臓を持っていて
でも誰もそれを見たことが無い
このままここでプラモデルになってもいいが
彼は研ぎたての探究心を持って立ち上がる