ぼさのば
山中 烏流

 
 
 
 
淡い、おれんじ
 
暖色のライトと
薄青いカーテンに覗く
しあわせ
 
 
頬張る一口に
乗り込むボサノバ
 
笑顔を作る魔法
私、だけの
秘密
 
 
少しだけ
甘さを抑えたココアと
きらきらに光る
果実の呼応
 
緩やかな時間が
微笑む度、流れて
 
舐めとる唇が
やわらかに
潤う感覚
 
 
自然な笑顔は
 
悠然と漂う空気の
合間で、弾けて
 
ひかる
 
 
いつもより
数センチだけの背伸びで
たどり着いた路地裏
 
喧騒の裏の
ほっとするような
ひととき
 
 
隣のOLが頼んだ
パスタの焼き音が
心地いいのは
 
やはり
このボサノバと
暖色のあたたかさ
なのだろうか
 
 
(最後の一口で
 ふと
 たったこれだけの一瞬を
 振り返ってしまった)
 
 
このまま眠れたら
起きなくてもいいくらい
の、幸福
 
捕われる前に
抜け出さなくてはならない
 
 
 
(…かたん。
 
 
 
グラスの氷が
傾いたのは、きっと
合図
 
一度の瞬きのあとで
私は
日だまりの外へと
足を、向けた。
 
 
 
 
 


自由詩 ぼさのば Copyright 山中 烏流 2008-04-30 12:30:24
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