川さかのぼる夢
草野大悟

あのとき
あなたがすわっていた石に
おんなじように
すわって
釣っている。

この川には
夢がのぼってくる
竜のように
猛々しく凶暴に
うねりながら
のぼってくる。

そういえばあのとき
あなたは
竜のこどもを
三匹釣り上げたのだった

一匹目は真剣に
二匹目は置き竿にして遊んでいるとき
三匹目もだいこんの花を摘んでいるとき
そうだ
おもいだしたぞ
あなたのうれしそうな
はればれとした笑顔

これを食うと
寿命が百年のびるから
ふたりで食おう
と、言い張る俺に
「かわいそうだから帰してあげようよ」
「ネ、」」」」」

川に帰った三匹は
おそらく母竜のもとに
戻ったろうに
ありがと
の一言もなく
あなたの自由を
根こそぎ食いとってしまった。

「ありがとう」」」」」
「サヨナラ」」」
「おやすみ」」」」」」

竜の眸して
あなたは
もどってきた三匹のこどもに
乳をやる。

命という名の乳を。


自由詩 川さかのぼる夢 Copyright 草野大悟 2008-04-29 22:31:29
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