さーせん
仲本いすら

最近のボクはこんばんわを忘れてしまった

常に出る言葉はおはようございますとおやすみなさいだけだし
愛してる、なんてもう久しく言っていない

昔、杯を交わしたおまえとは何でも話せたような気がするけど
よく考えてみたらボクはお前のこと突き放したんだった

(すべてが今更すぎて、もう何もいえない

幸せなひとを見ると心がほくほくするんだ、と茶色の手帳に
走り書きしておいたけれど
結局ボクは優しそうなおばあさんにさえ「どけよメスブタ」と簡単に言えてしまえて

(気が付いたらタールで真っ黒なのです

もう話なんてしちゃいけないよ、と母さんに言われても
気が付いたらボクは隣の壁に向かって自分のこと
だらだらと一時間は話していられるし

お風呂場の換気扇からもれてくる上の階のひとの鼻歌を
これでもかってくらい耳を澄ませて聞いてしまう

(優しさってなんだっけ、と真顔で聞けてしまう

長い事、こんばんわとこんにちわが言えていない

でも気が付くと謝りたいことだらけで、

誰に対してもごめんなさいって言ってしまう


(こんな詩書いて、ごめんなさい


クールに泣いてみたいって、誰と交わした会話だったっけ

(こんなボクで、ごめんなさい



自由詩 さーせん Copyright 仲本いすら 2008-04-29 05:11:05
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