「夢の中の市場」
ベンジャミン


ピストルを背中に押し付けられて
細い路地へ連れ込まれる

そんな夢を見た

銃弾が放たれた瞬間に
ちょうど目が覚めるとは限らない
痛みのない苦痛を味わうこともある

それが夢だ


   ※


日常とかけはなれたところにも現実はあって
たとえば冷蔵庫の中の野菜たちも
いろんな流通経路でここにたどりついたわけだ

買われて売られて
売られて買われて

そして
最後は消費される

さっき見た夢も
僕に消費されてしまった
嘘みたいにあとかたもない

そんな嘘みたいなことがたくさん集まって
日常が積み上げられてゆく

ピーマンみたいな出来事や
かぼちゃみたいな出来事や
ほうれん草みたいな出来事も
きっと本当にあるんだよ


   ※


市場では
にぎやかな掛け声が飛び交っている

その中には
さくらんぼみたいに寄り添うような
幸せもあるのだろう

ときおりそんな
夢を見ることもある

そんな束の間でさえ
気がつけば
瞬く間に消費されてゆく

でもいいさ


どうせ僕ら自身も
僕ら自身の生き方の中で

そうやって消費されてゆくのだから


              


自由詩 「夢の中の市場」 Copyright ベンジャミン 2008-04-26 07:44:01
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