小さな権力の中の野良犬または雑種
草野大悟

俺たちは野良犬または雑種である。
小さな権力の中の
二十五万分のいくつかである。

頭の中まで筋肉で
感性のかけらもない
権力の犬である。

この平和ボケしたニッポンのヒトたちの
自己防衛本能もしくは動物力を
取り戻そうと
筋肉を削りながら消費されてゆく
犬である。

犬の受ける罰は
罵倒であり
石であり
また
犬を含めたその家族の死である。

一昨日
俺たちの同期生が死んだ。
縊死であった。

昨日
彼の奥さんと二人の子供が死んだ
自動車もろとも海に。

そして今日
小さな権力の
五百分の一が
〜そうだよね
 少年非行が多発するのは分かったけど
 原因は何と思うかね?
と、区別して問いただした。

警察は
私の言うことを黙って聴いて
私の電波を取り除くことが
当然の仕事でしょ。

悩み深い
精神障害者が
一方的に一時間二十分捲し立てた。

別の電話では
サラ金をかりまくって
外車を買っている男が
取り立てに来ているから
巡査すぐ来いと
がなり立てた。


中学三年
浜崎あゆみ似の女の子で〜す
メール待ってま〜す

二十歳
海の好きな男です
会いたい

出かけていって
犯された。


俺たちは
野良犬または雑種である。
忌み嫌われる
この国の犬である。


ムツゴロウが死んでゆく
トビハゼが死んでゆく
干潟が
海のウテルスが死んでゆく
ヒトが
死んでゆく。
五百分の一がふんぞり返る。

俺たちの影が
月に映っている
俺たちの牙が映っている。




自由詩 小さな権力の中の野良犬または雑種 Copyright 草野大悟 2004-07-06 22:34:07
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