あいまいなからだ
よ
夕刻
おとこまさりの包丁裁きで
頭を落として
からだを開いた
中骨を
刃先でなぞる
膜を破る
洗い 流す
ぴりぴりとあかい
赤は
どこまでも
泣き止まない
鍋の底で
しりもちをついた
情けないぶぶんから
ゆるしていけたら
いいんだ
と思う
泳ぐ
からだだけの海で
すわれていった
あくを
あくをすった
空は
褐色にきれい だ
断定的なものなんてほんとうは何も
ない けど
頭を落としたから
覚えている
空は
夏だった
骨から
覚えている
嘘 だ
もっと堅実なところで
覚えている
空よりも
夏 を
あいまいに
きっと
夕刻の十分
煮染めた魚の
あまくこげたにおいを
卓にのせると
喉の奥が じん と
熱くなった
ずっと泣いていたのは
わたしのほうだった