あいまいなからだ

夕刻
おとこまさりの包丁裁きで
頭を落として
からだを開いた

中骨を
刃先でなぞる
膜を破る
洗い 流す
ぴりぴりとあかい
赤は
どこまでも
泣き止まない


鍋の底で
しりもちをついた
情けないぶぶんから
ゆるしていけたら
いいんだ
と思う



泳ぐ
からだだけの海で

すわれていった
あくを
あくをすった
空は
褐色にきれい だ
断定的なものなんてほんとうは何も
ない けど
頭を落としたから
覚えている
空は
夏だった
骨から
覚えている
嘘 だ
もっと堅実なところで
覚えている
空よりも
夏 を
あいまいに
きっと



夕刻の十分
煮染めた魚の
あまくこげたにおいを
卓にのせると
喉の奥が じん と
熱くなった

ずっと泣いていたのは
わたしのほうだった



自由詩 あいまいなからだ Copyright  2004-07-06 17:01:59
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