千年桜
石瀬琳々

つとさしのべる指先から
はらはらと はらはらと
こぼれては落ちる春の
あれはあなたと私の約束です
遠い日のひめごとです


はらはらと 散ってゆく
くれない 淡紅うすべに 淡紅白うすべにしろ
そして 白 しろ 白
私の言葉は形にならない
こぼれるだけです
指のあいだから むなしい隙間から


あの日から私は心を置いたまま
身を焦がすだけの
たまゆらとなりました
今宵も小指に紅をからませ
すっと横にひき
待っています 待っています
またこぼれてゆく 指のあいだを


すくおうとすれど
甲斐のないしぐさです


あなたのいとしい指先から
はらはらと はらはらと
私もまた落ちて こぼれて
夢の逢瀬を乱れ咲く
あの春もこの春もその春も



自由詩 千年桜 Copyright 石瀬琳々 2008-04-09 14:01:23
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