海と耳たぶ
A道化




耳たぶが
熱い


空調装置にたしなめられた
浅いシーツのような室内の夜には
昼間に溜め入れた太陽の
滴りそうに赤い耳たぶ一滴で
ベッドが太陽の海になってしまうのを
防ぐ為
海に行きたい、なのに
海がない


耳たぶが熱い
なのに、海がない
海ではなくシーツが耳たぶを
ああ、深い海に浸したいのに
海の代わりに耳たぶを冷却してしまうシーツを
抜け出して
海に行きたい、なのに
海がない


だからじっとベッドの上で
耳たぶを塞ぎ息を浅く潜めている
だからじっとベッドの上で
耳たぶを防ぎ息を浅く潜めている
なのにまだ耳たぶが熱い、だから海に行きたい、なのに
どうしても海がない海がない海がない、ああなのにこんなに
耳たぶが
熱い



2004.7.5.


自由詩 海と耳たぶ Copyright A道化 2004-07-05 06:10:07
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