瑞香 結香 沙丁魚
木屋 亞万

瑞香ズイコウ 結香ケッコウ 沙丁魚シャーディンユィ


香る花には毒がある
棘だったのは舶来品
針千本は呑めたとて
毒を飲むのは難しい


難儀な波が津々浦々へ押し寄せ
漁師達を心底困らせた事がある
港を襲った大量の黄色い砂の波
砂漠の底に漁村が幾つも眠った

凄惨に殺された珊瑚は白化して
砂となり瓦礫と共に眠っている
碇を沈めたままの船は白い砂と
海底で積もる話に花を咲かせる


永遠の栄光を持つ冬が好きでした
不死不滅の生物が暗躍する季節か
あるいは白い静物が主役になります
大人しく動かぬ物が引き立つものな

砂の底というのは案外やさしいものだな
波を待つだけというのも飽きてきました
俺は波を自分から起こしながら進むからさ
熱心に砂を集めましょう夏の坊主のように


世界を構成する物質のすべてが
小さなちいさな粒になった
牛の骨も雁の羽根も鰯の鱗も
淡い色彩の砂となって零れている

地球が砂丘に埋め尽くされる日に
惑星の名を砂球に変えようと思います
白い珊瑚の粒がそう言ったとき
船の碇は沈丁花の花を咲かせた
零れる香りの粒に砂は春を感じ

積もる話は重なり合うも
噛み合う事はなかった
こぼれる話の核には
いつも少し毒があった


自由詩 瑞香 結香 沙丁魚 Copyright 木屋 亞万 2008-03-31 01:11:21
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