「廃園」
菊尾

手招き誘われるまま夜道を遊歩
遮断機も下りない時間
どうやらその心は
分離帯に乗り上げてしまったよう
奇数だけを数え口ずさむ
9番目の階段で振り返る
まだ、誰もいない

どこへ連れて行くの
朽ちゆく心理が痛むのですか
そんなに固くならなくていい
ただ、春に酔えばいい

まるで君はフタリいるようで
掴まえた手のひらは別人のそれみたい
笑っていても虚ろな眼差し
伸びた髪はいつ切るのでしょう


総じることなんてない
まとめるなんて不可能だから
そのままフタリと会話する
適切な距離は保つから
ゆっくりしていなさい


柔らかい雨はスローな所作です
べつに言葉など無くてもよくて
綺麗な日だったねと
眠る前に一言
それだけで

黒い傘を差して
廃園にて佇む君
種を持って今行くよ
君はきっと
薄紫の笑みを浮かべて
迎えてくれる


自由詩 「廃園」 Copyright 菊尾 2008-03-20 18:33:09
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