かけるゼロ
智哉

生まれて初めて恋を知った男が
生まれて初めて失恋をしたのも
当然のことだが今夜のことだ


彼は駆けてみた
走り去った白い軽自動車に追い付けるかと
車種はよく知らない
ただナンバーは好きな数字の羅列だった

彼はかけてみた
今度は電話のことだ
繋がらないのは予測していた
欲しいのは声ではなく恋だ

彼は賭けてみたのだ
彼女がいつか恋を失えば
また彼の元に帰ってくるかどうかを


可能性は×0
ではないはずだ


自由詩 かけるゼロ Copyright 智哉 2008-03-20 01:07:43
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