一周忌
ゆるこ
湿った夕べ
父の洋服をたたむ
生前の匂いは嫌いだったが
今では柑橘の香りの中で探してしまう
おいおい、そんなんじゃ
だめだろう
酒と、煙草と、スルメと、深夜
私が刻む単調な世界が
ふいに孤独を帯びたと思ったら
いきなり砂嵐が起こった
今から車に乗って
知らない町に出かけようとする弱さを
紫煙越しに見られた
その濁った瞳は。
何を、どうして、どうやって。
あの頃は、
一体なんだったのだろう
ここにある薄汚れたサラシは
伸びきった2着500円の丸首のシャツは
一体、
ああ
、
鼓動とともに流れる
紫色の私が
部屋をうめつくして
消える場所を探している
こんな小さな心は
あの香りで洗われる
諭される
(許される)
手を伸ばした。
真夜中だった。
窓越しの高速で。
クラクションが鳴った。