バスルームの毒
亜樹

言葉にすれば
背徳だとか禁忌だとか
人類有史以前から
ありふれた、それ。

  長風呂していると
  ぽとり、と汗が落ちました
  それは昨日の
  私のささやかな悪事
  手にしたあぶく銭
  ぽとり
  ぽとりと垂れ落ちる
  ささやかな悪事
  膨大な悪事
  焼きあがったトーストの上に
  たっぷりジャムとマーガリンを塗りこむような罪悪感

  あんまり浸かっていたものだから
  跡形もなく溶けてしまった私
  ああお母様
  どうぞ御気になさらず
  一思いに流してください
  もう一度凝固する前に
  栓を抜いて
  くるくると渦巻きたいのです

言葉にすれば
モラルだとか貞節だとか
紀元前より
ありきたりの、それ。
いくら服を剥いだ所で
削ぎ落とせない。
バスルーム。
一人。
流れない毒。


自由詩 バスルームの毒 Copyright 亜樹 2008-03-19 18:53:03
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