創書日和「鳥」
虹村 凌

試験中の教室の空気を切り裂いて鳩は勢いよく窓ガラスに突っ込むと
そのまま羽を舞い散らせて深い眠りに落ちた

人間はキューブリックが考えるより愚かしく
ゆっくりと進化だか退化だかを遂げて生きている
いまだに鳥みたいに自由になりたいといいながら
宇宙の旅もままならずに
時計仕掛けのオレンジばかり熟れてゆく

飛んだ高さが高ければ高いほど
落ちた時には酷い事になる
飛んだ高さが高ければ高いほど
落ちるまでに時間がかかる

東京の空を渡り鳥が走る
この海を越えて行くというのか
それなら連れて行ってくれないか
ついででいいから
そこのコンビニまで
卵を買いに行くから

どれだけ卵を温めても雛は孵らず
どれだけ手羽先を食べても羽は生えず
どれだけ囀っても空は飛べない
繰り返し手を動かす
指を閉じて開いて

飛んだ高さが低いから
ジョナサンよりも早く飛ばなきゃいけないんだ


自由詩 創書日和「鳥」 Copyright 虹村 凌 2008-03-18 04:05:51
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