創書日和「鳥」
虹村 凌

風切羽を無くしたジョナサンは
くちばしに咥えたチェリーを誰にも届けられないまま
モノクロームになって千切れていく
きりもみしながら

その隙に僕らは天国のドアを叩こう
ハト時計みたいに出たり入ったり
次のハトが飛び出しても
何度でも何時までも
絵の具みたいに光りながら
ナメクジみたいになるまで

雨ざらしのスクーター
綿埃の中のドレスシューズ
眺めたまま燃え尽きるシガレット
滑り 満ちる香り
声が する

百匹の猛禽類が潜む事を知らないから
奴ら 後ろ指指して笑いやがる
今すぐにでもビルの屋上から飛び立つのさ
風切羽を無くしたまま

そう
スピードよりも高さよりも宙返りの角度よりも
重要なのは着地
着地
着地
鮮やかな着地
二本の足で着地
もう一本の足は宙に浮いたまま

ネガティブクリープ
ドラマティックテンション
セットアップ
クライマックス

そのくちばしに小指を咥えて
メランコリックな角度で飛んで
きりもみしながら飛んで
飛んでいく

薄いコーヒーに戸惑う
一晩中心配しても泣いても意味が無い
そのまままんじりともせずに朝を迎える
狂った朝の光の様に
飛び立つベランダ

デサチュレイト
ペニーロイヤルミルクティー
ネガティブクリープ
届けるのさ爪を
狂った朝の光の中で
素晴らしいこと
モノクロームになりながら

千切れる
声がする

雨ざらしのチャイルドシート
綿埃の中のスニーカー
咥えたまま落ちる
くちばし
きりもみしながら
モノクロームになる

三本目の足はまだ着地出来ずに


自由詩 創書日和「鳥」 Copyright 虹村 凌 2008-03-22 23:31:22
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