いわなつ
あおば

              080314



夏が聳えている夕刻
薄汚れた雲が帰宅して
さっぱりした荒野の果てを
もの悲しいとも思わずに
午後11時の鐘が鳴るからと
礼拝堂の前でお祈りする
祈るふりをする異教徒達と
眠れない光沢を磨きながら
忙しい気性の前触れに
吹きだまった合鴨色は
陽に焼けたバックドロップ
しなやかなプロレスラーを
薄荷色した熊笹の影に誘い
ねこのように消してゆく
偽物の銀座商店街の人々の
あしおと

雑色に映える天上席で
すすり泣くまずい蕎麦殻
九官鳥に無視されたカラスが
急降下して虹鳩を襲うのを
無慈悲に飲み込む華やかな
明るい色した漢方薬局
紅雀、鶸、岩燕、合鴨
知る限りの鳥の名を
あかるい野に放ち
いわなつ!と叫ぶ



自由詩 いわなつ Copyright あおば 2008-03-14 06:15:25
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