百合
たもつ

街外れのバス操車場の裏に
遊園地はひっそりとあった
中心には音楽を鳴らしながら上へと向かう
ゴンドラのようなものがあった
一番高いところに着いても
近くにある民家の壁や窓しか見えなかった
他には狭い敷地をレールで一周する乗り物や
ロープと丸太で作られた簡単な遊具や
ウサギなどの小動物を触れる広場
などがあるくらいだった
遊園地に連れて行って、と
街の子どもはみな親にせがむけれど
一回行ってしまうと他の楽しい遊びに夢中になった
平日は人影もまばらだった
休日になると大人たちで少し賑わった
乗り物の操作をすることができるのだった
大人たちは列を作って自分の順番を待った
子どものころの
つまらない、という思い出しかないのに
大切なものを愛おしむような手つきで
スイッチを押した
天候の悪い日は休園だった
古びた乗り物に雨はよくなじんだ
誰が世話をしているのか
夏にたくさんの百合が咲く一画があった
勝手に生えているのかもしれなかった



自由詩 百合 Copyright たもつ 2008-03-13 18:55:32
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