城之崎二手次郎

 夜。妻殺しの容疑で指名手配されている男が、建設中のビルの中に身を潜めていた。時効まであと二日という時に、隠れ住んでいたアパートが警察にばれた。間一髪で部屋から抜け出し、ここへ逃げこんだ。腕時計を見る。あと数分で時効だ。体を縮めた男は、若い女の声を聞いた。お父さん。忘れるはずがない。妻を殺した時はまだ小学生だった娘の声だ。男の体から緊張が抜け落ちた。娘は警官になっていた。男は両手を上げて立ち上がった。

あとがき。
二〇〇字物語第二十九弾。


散文(批評随筆小説等)Copyright 城之崎二手次郎 2004-07-01 15:43:14
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