引力
佐々木妖精

記憶を閉じ込め
机の上
ペン先を生活が覆い
口を滑らかにしても
なんのために流れているのだろうね
飲むためでも見せるためでもないなら
なぜあんなにも叫んでいて
しばしば痛みを伴うのか

あるいは悼むことすら
その人を否定することになりはしないか気がかりで
素直になってやめてほしいと言葉を重ね
しかしたとえ一時の気の迷いでも
その人が強く望んだことなら認めたい
これも確かな望みだ

健康を目指すように
考えてはいけないのなら
突発的に遭遇する以外なく
気がついたら泣いていたように
本の続きを楽しみにしながら
ペンだけが転がって

気がついたら



白紙のまま提出した問題用紙に
読点が置かれ
それは平坦な丸い出来事で
区切りがなく
飲み込まれそうでもあれば
掌に収まりそうでもあり
修正液に浸し込んでも
直角に脚が飛び出る
くすぐったつま先は澱んでいて
気づかないまま




自由詩 引力 Copyright 佐々木妖精 2008-03-10 09:38:11
notebook Home 戻る