闇もまた遠く
佐々宝砂




翼もないのに太陽に近づいたので
どこにも行けなくなってしまう
尾根伝いにやってきた
自分の足跡をふりかえる と
笑い出しそうな風が耳元でさわぐ

みどりの尾根に戻ろうか
それともあくまでも頂上をめざして
岩を登ろうか?

岩肌は日に温もり
とりつく島もしっかりあるのだが
どこにも踏み出せないまま
太陽を仰いでいる

太陽は遠く
闇もまた遠く

(2007 宝剣岳にて)


自由詩 闇もまた遠く Copyright 佐々宝砂 2008-03-07 00:38:49
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