創書日和「月」
虹村 凌

明けない夜は無いらしいから
幾つかのあの夜達を積み重ねたら
いつか朝を迎える事が出来るだろうか

冷たく張り詰めていた空気が少しだけ緩む
肩の筋肉は若干だが弛緩する
あぁそうだ
閉塞とか孤独とか
もうそんな話はしなくていいのか
そうだ
幾つものくだらない話をしようか
赤い洗面器を頭に乗せた男とか
アルパチーノの台詞の発音の事とか
昔は昇竜拳が出せなかった話とか
小さい頃はコーラの泡が飲みたくても飲めなかった話とか
でも実際に飲んでみたら別になんて事なかった話とか
親父が何であんなにビールの泡をおいしそうに飲んでたのか
そんな下らない話をしようよ

今まで明けなかった夜はないし
来なかった朝も無いんだけど
後悔した夜は沢山あるし
繰り返したくない夜も沢山ある
だからそんな夜達を積み重ねて
いつか朝を迎える事が出来るだろうか

薄暗い部屋の隅にもかすかに光が差し込む
昨日と変わらない筈の部屋が若干明るむ
あぁそうだ
暗闇とか恐怖とか
もうそんな話はしなくていいのか
そうだ
幾つもの下らない話をしよう
ツンデレの話とか
髪の短い女の子が好きだとか
胸の小さな女の子が好きだとか
一人で何でも出来るような女の子が好きだとか
そんな話をしようよ
明けない夜は無いらしいから
幾つかの夜を積み重ねて
いつか朝を迎えようよ
真っ青な空に白い月が見えるような
そんな朝を迎えようよ


自由詩 創書日和「月」 Copyright 虹村 凌 2008-03-06 17:29:40
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