透明な竜を飼っている
RT


動かないで
うっかり逆鱗に触れないよう
紅を差してあげる

私の部屋に浮かび揺れる
赤い花びらに
首を傾げる友達

透明な竜を飼っている
躾はいいほうだ

私の帰りが遅いと寂しがり
スペルを唱えてしまうから
部屋に戻るなりしっかりと
見えない彼を抱きしめる
ひとりにしてごめんねと
透明な彼に焦点を合わせて見つめる
満足そうにクウと喉を鳴らすまで
ざらざらと鱗を撫で続ける

時々飛びたがる
深夜を待って私達は空へ
逆鱗に触れないように彼の背に乗り
透明な体越しの地上の星座を見下ろす

名前はない
呼んだらきっと消えてしまう
幻想や錯覚との違いは解らないが
確かに感情が宿り
愛情もまた

今夜も楽しかったでしょう?
と、彼がご褒美をねだって翼を捩る風
楽しかったよ、と見えない首筋を撫でる
彼からは頬に冷たいキス
少し頬が濡れた




自由詩 透明な竜を飼っている Copyright RT 2004-06-30 15:35:04
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