巡礼の、風景
望月 ゆき

じょうずに結えない髪の、かきわけたその奥に、
海が広がっている
黒い底は伸びて、光を吸いこんでいる
あなたがその闇へと、手をのばしては
救おうとする影を
あてずっぽうに踏んで、遊ぶ




    
それは/誰ですか/、の/イメージ/それと





満ち潮を滑って
近づいてくる郷愁の声が
泣いているみたいに聞こえて
沖の方で何度も浮き沈みする顔が、さっき
とても見覚えがあるように感じたのだけれど
一瞬の追慕のあと、それは
波の間に沈んで
見えなくなってしまった




    
夜になったら/眠って/それから/起きると/
潮が/、ね/ひいていて/地肌が/かゆくて/
、ね/干潟で/あなたが/、胡座して/、いる





あなたの中で 繰り返し育っては死んでいく、
呼び名を持たない感情の、墓の その前で、
束ねるにはまだたよりない、
湿り気をふくんだままの髪に 
ゆっくりと今、くしをとおす




  


自由詩 巡礼の、風景 Copyright 望月 ゆき 2008-02-29 23:59:10
notebook Home 戻る