夢の中に落とし物をした日
小原あき

夢の中に落とし物をした日の朝
猫になっていた
仕方がないので
夫を会社に送り出してから
家事は明日にしようと決め
日向ぼっこをして過ごし
夜になったので眠った
明日はせめて、猿になりたいと思った


夢の中に落とし物をした翌日の朝
雀になっていた
仕方がないので
夫に踏みつぶされないように注意しながら
窓のところへ行き
嘴でガラスを叩いた
夫が気がついて窓を開けると
私は飛んでいった
ため息を吐く夫が
にゃあと鳴いたように聞こえた


夢の中に落とし物をした翌々日の朝
ミミズになっていた
仕方がないので
地面を這っていたら
後れて雀になっていた夫にくわえられた
死んでしまったと思ったけれど
やっぱり私は守られていた
帰ろう、と夫が言った


夢の中に落とし物をした翌々翌日の朝
人間になっていた
だけど夫がミミズになっていたので
代わりに会社に電話をした
今日は久しぶりの休日だね、と笑いかけたら
ミミズの夫がくねくね踊った
ゆったりとした二人きりの休日は過ぎ
明日には人間になるだろう夫を
私はどんな姿で起こそうかと考えながら眠った


翌日は夢の中に落とし物をしなかったので
人間の姿で起きた
人間の夫婦に戻れたので
人間の夫婦のように
会社に出掛ける夫に妻はいってらっしゃいを言うことができた


もう夢の中には
落とし物をしないようにしようと思った







自由詩 夢の中に落とし物をした日 Copyright 小原あき 2008-02-29 14:21:35縦
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