夏の引力
霜天

草原の秘密基地
今はもう影だけで

虫取り網を振り下ろす
残像が目に焼きついた
夕暮れの蝉時雨を
いつまでもそこで聞いていたっけ


通りすがりの車窓から指差した
この草原は僕なんだよと
不思議な顔を向けられた
理解を求めたわけでもないけど


秘密基地の仲間たち
合言葉がちらつく草原で
家と家とに挟まれた空は
まだあの頃の色だった

通りすがれば眺めてしまう
足を止めれば引き寄せられる
もう響かない笑い声
強くなる夏の引力に

蝉がどこかで鳴いた気がした


自由詩 夏の引力 Copyright 霜天 2004-06-29 14:09:34
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