なみだ投げ
木屋 亞万

思いきり泣いたので
結構貯まった涙の玉
業者に売りさばくのも
良いのだけれど
私を悲しませたヤツに
思いきり投げ付ける方が
良いのだ

仕事終わりに呼び出した
人気の無いオフィスで
同僚に玉を投げ付けた
何故だかすぐに泣けてきた
彼も謝りながら泣き出した
大きく振りかぶって全力で
涙の粒をぶつけ合った
互いの額や頬で弾ける粒は
雪の花のように散っていった

疲れが見え始めた頃
私の右目から赤い粒が
ひとつ零れ出て来た
血かと思ったらハート型の
割れかけた粒でお菓子の
幸運を呼ぶ粒のように
手の平に残った
これは投げてはいけない
私の恋心そのものだから
半分に割って二人で食べた
頬が引き締まるくらい
甘酸っぱい味がした


自由詩 なみだ投げ Copyright 木屋 亞万 2008-02-27 13:24:33
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