みずの春彩
山中 烏流

 
 
木製のパレットに
弾かれていく、水泡
そこから零れ落ちる/滲む
たくさんの、はじまり
 
かたどった筆先を
やわらかく
浸した水面には、
ほのかな色を持った
円卓が
広がっていく
 
やがて
その賑わいが
ぽつぽつと伝わったような
色彩に溢れる、瞳で
私は少しだけ
円卓へと
指を、浸して
 
 
キャンバスに映るものは
きよらかな陽光
そして、
少しだけ不安定な

 
 (私、ほら
   大人になってしまうよ。
 
呟いた声で
飛び越えていけるものは、
きっと
あの窓と
埃に塗れたイーゼル
そして、
芽吹いたばかりの
若葉だろう
 
 (な。
 
 
言葉の海に
溺れていった、朝
そのはじまりで
私は
弾けた色に、
手を振りながら
 
(夢を見ていた。
 その木漏れ日の
 感覚だけで私は
 歩けると思えた)
 
もうすぐ
触れてしまうのだ、と
幾度目かの産声が
告げる
 
 
 (もう、こんなにも
         近い。
 
 
みずいろに淡い
夕暮れを、迎えて
遠いところはまだ
嫌々をするように、
しろい
 
生温い風は
いつのまに、方位を
決めてしまって
私はいつも
そのしっぽの部分を
見るばかりだった
 
 
今、横切った
 
 
 
 
 
 (春、が
 
 
 


自由詩 みずの春彩 Copyright 山中 烏流 2008-02-25 22:40:53
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