乾いた冬空の下で、ぼくたちは白く太い息を吐きながら、
汗にぐっしょりとなってドッチボールに戯れていた。ぼく
はみんなであり、みんなはぼくであった。白っぽいホコリ
を立てて風が通り抜けていく広場で、ぼくたちはドッチボ
ールに夢中だった。
「耕作は、いつも、Hの後ろにカクれているんだな。」
敵側の悪意ある子供の言葉に、ぼくは一瞬真空に身体を
縮めると、素早く味方を見回した。しかし、その言葉は、
みんなの吐く白い息と同じように、透明な虚空に消えて、
みんなはみんなの遊びに没頭していた。
ドシン、突然、ぼくの胸にボールは当たると、大きく上
方に跳ね上がって、再びぼくの腕の中に落ちた。それはあ
っけないほど簡単だった。ぼくは初めて捕ったドッチボー
ルに身体中を熱くさせながらも、心の奥底に、自分を冷た
く見据えている目が生まれたことに気が付いていた。