ランプとジャンクション
雨を乞う

 真っ黒な世界がもうすぐ終わるとか考えていた数年前の祈る手の影、新しい洗脳、未来のシンパシー、軽い衝動で。風の強い国で君を見失い、あれだこれだと結論ばかりで手を汚さずに土を掘るやり方で満足していた。僕らの血と肉が逖い影に酔う、踏み込む度に僕は生かされる、些細な答えがどこかへと直結する。高い位置で宙を睨む横顔を追いかけ、ケモノやモノノケの類の声をあげた僕は悲しくなる、もうすぐ。

 夢の中で見た昇っていく音符の青い岸辺にはやさしい雨が降るだけで、目覚めろと呼んだ歌を聞きたくなかった。くすね盗ったのは君の大切な最初で最後だ、奪う事にも慣れたのに奪われるのには不器用で、ついた嘘を隠すために掻き分けた砂の感触で気分が洗われる。砂漠のような街、矮さく巨きな街、うねるバックミュージックの下には澱んだ河が流れてる、君に全部あげるよ。

 ハイウェイで振り切った概念とか意味は粉微塵で、追突を繰り返したら何になるんだろう、それはなんとなく僕らの費やしてきた進化の綻びから飛び出た突起に似ている。環を描いて廻るふたりの始まっては戻ってきてしまう爪あとが光って消える涙もよう、窓を濡らさずにガラスだけが曇る。右耳で追った世界の中心にそびえる塔が昨日と同じように燃えては、0が並んだら消える。指で×と描いて、どこへでも行けるふりばかり。

 まばたきの合図で見逃してしまったもの、僕は知らないから許されたと思い込み、笑ってしまう、泣きたい風なのに。化石みたいに濁った灰色と黄色が混ざる月が、宇宙の果てにあるメトロポリスに連なる機械仕掛けの山脈に落下していく。きっと地面に触れたら崩れてしまいそうな、次はもうないような、そんな気がしている。いい加減な昨日とあやふやな明日でごまかした現在を生きるための方法は、そんなことばかり考えていた一秒が永遠に続いて日々を成す、はっと我に返る。真っ黒な世界の終了、恐れなど皆無だ、等間隔で並ぶナトリウム灯がまた朝を急かしてる、そこへ向かうだけなんだ。

 君に言いたい事がある、残さず聞いていて。


自由詩 ランプとジャンクション Copyright 雨を乞う 2008-02-22 03:57:35
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