Ferris wheel
山中 烏流

 
 
 
 
 
 
たどり着いたとき
足元は
遠く、離れて
 
 それはたとえば
 風船に追い抜かれたり
 迷子の小さな声が
 群集で掻き消されたりする
 午後のはなし
 
解くようにして
唇を震わすことを
君は常に
自分としているのか
君の声は、どうしても
形を持って
聞こえないのだけれど
 
爪痕を残すように
私は、手を
差し出す
 
 
てっぺんの窓辺で
誰かがそっと
頬杖をつく
そのとき
虹彩を模した色に
視界を
染められたなら、と
囁く
 
遠く萌える、鮮やかな緑
その内外に
白をちりばめる夢
 
紡いだ言葉のあとで
君は、小さく
ほんの小さく
むせび泣いたあと
初々しい
笑顔のままに
 
手を
とってしまう
 
 
 手を繋いだ
 夢の終わりに近づく、五時
 
 扉が開くとき
 私はきっと
 少しだけ、なにかを知る/ってしまう
 
 そうして君は、
 そのときになって
 
 手を
 離すのだろう
 (か。
 
 
僅かに
開いていくものは
踏み出すより、速く
私を
追い抜いてしまう
 
零れ落ちて、
 
低速になる六時
私は指先から
光に変わっていく
その
緩やかなる消失を
君は、きっと
見ないふりをして
本当に
見えなくしていくのだろう
 
 
今、君が、私を
 
こんなにも
忘れていくように
 
 
******
 
 
てっぺんに座る
その足元から
扉の開く音が響く
そのあと
漏れだしたであろう光は
束になって
風船のあとに、続いた
 
私の手や様々は
未だ、閉じられている
 
伏せられた睫毛は
ざわめきに似た声を
あげる前であるから、
その
開口を裏切るように
 
 
私は、手を
 
 
******
 
 
停止音のあと
ざわめきが
波打つようにして
離れる
もたれかける腕は
少しだけ、重心に甘え
そのままの形で
眠るように
止まってしまった
 
指先で触れる、
あたたかな空虚
 
煌めいた街並みが
寝息に沈む頃
君はきっと
あの光のままで
誰かの手を
引いているのだろう
綺麗を飾ったままに
誰かの指先を
包んで、
 
 
目を閉じる、十二時
 
終わろうとする声に
返る答えは
いつだって、自由だった
 
 
零れ落ちて
その
波紋から伝うものは
呟きにも似た
祈り、
 
 
終わらなければ、
いいと
 
 
 
 
 
 


自由詩 Ferris wheel Copyright 山中 烏流 2008-02-22 01:43:52
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