ブルードームにて
木屋 亞万

青葉は青くないじゃないかと
君は言う
緑色なんて昔はなかったのさ
信じないだろうけど
私はそう思う

海も山も川も空も
青かった
全部濃淡があって
響くような青のモノトーン
白い波と雲が
鮮やかに浮かび上がる
照明で透かしたように

ならば夜は
藍の世界だろう
宇宙を溶かして描いた
水墨画仕立ての水中花
瑠璃色の月を
半球の夜空に転がす
夜通し振り続けないと
星が沈殿してしまう

君と私は夜の中に立つ
蒼い顔をしたまま
世界は空気を混ぜるのを
ずっと止めない
雪は空を舐めるように降る
循環する青い結晶

青い稲妻を見た
気がして
霙の中に冷たい怒り
薄紫に染まった空
一瞬の裏切りに
裏山がざわつくのが
わかった
風に揺れている
月夜に青い木々

青葉は緑かもしれない
でも言葉は青いと
君は言う
君の万年筆が書く文字は
ロイヤルブルー
決まって青い

空から降るものを好み
空から落ちるものを嫌う
君の好みに共感できた
青は好きだけれど
緑も紫も嫌いな君に
藍はどうなのか
尋ねたくなった
二人を繋ぐ青い糸が
愛に染まる前に


自由詩 ブルードームにて Copyright 木屋 亞万 2008-02-13 15:09:44
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象徴は雨