化石
よしおかさくら

夫の耳を探っていると
小さな化石が出てきた
耳掃除は毎週日曜と決めているが
今まで見たことも無い色だった
これはいつのものですかと聞いてみる
寝言で
白亜紀と返事が返ってくる……


強い否定で物事を聞いていると
最後には肯定しなくてはならず

(あなたの臍曲がりの所為で
(あなたの耳は真っ直ぐなのだ

負けん気で嗤っていると
しっぺ返しを食らってしまい

(あなたの意固地の所為で
(あなたの耳は塞がれるのだ

けれども情にほだされて
やはり損ばかりして

(あなたの優しさの所為で
(あなたの耳は抓られる


夫の耳の中で
言葉という言葉と
笑い声に
高らかな歌声に
乾かされ続けた化石だ
わたしはきっと再び掘りたい
幸せな化石を


自由詩 化石 Copyright よしおかさくら 2008-01-28 10:43:13
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。